介護施設で働く中で、利用者の暴力に悩んだことはありませんか?
私も介護職員として働いていたときに、利用者の暴力が恐怖で、震えながら仕事をしていたことがあります。
暴力が起こる背景には、介護職員の関わり方が影響する場合もありますが、病気による衝動でコントロールが難しいケースも少なくありません。
この記事では、利用者から暴力を受けたときに、どう対応したらいいかを解説していきます。
結論をお伝えすると、一人で耐えようとするのではなく、施設全体で暴力問題を考えていくことが大切です。
思い悩む介護職員が一人でも減りますように。
介護施設での暴力の実態
利用者からの暴力は、身体的暴力と精神的暴力に分けられます。
身体的暴力とは
身体的暴力とは、直接的に相手の体を傷つける行為のことを指します。
介護現場では、以下のような行為が該当します。
精神的暴力とは
精神的暴力とは、言葉や態度で相手を傷つける行為を指します。
直接的な暴力ではないものの、継続すると職員に強いストレスを与え、精神的なダメージにつながります。
福祉施設・事業所で暴力を受けた職員の割合
平成30年の調査(介護現場におけるハラスメント対策マニュアル)によると、各施設・事業所で暴力を受けた職員の割合が出ています。
これによると、入所・入居施設は、 「身体的暴力」及び「精神的暴力」のどちらも高い傾向となっています。
大勢の職員が利用者からの暴力に悩み、日々頑張っていることが伺えます。
介護施設で利用者からの暴力が起こる原因
利用者が職員に暴力を振るう背景には、さまざまな理由があります。
ここでは、主な原因を4つに分けて解説します。
介護職員の対応に原因がある
職員の関わり方によっては、利用者の不安や不満を引き起こし、暴力につながることがあります。
- 介護職員の都合で介護をしている
- 尊厳を無視した関わりをしている
- 介護職員の知識や技術不足で身体的な痛みを伴う介助をしてしまう
暴力が悪いことだと認識していない
利用者自身が暴力行為を問題だと認識していないケースもあります。
- 昔のしつけの名残で、叩くことが当たり前になっている
- 女性を軽視する価値観があり、職員を自分より下と見ている
- 過去に暴力を容認されていた経験がある(家庭内や職場での文化)
病気や体調不良が影響している場合
高齢になると、認知機能や身体の変化により、感情のコントロールが難しくなることがあります。
- 認知症によるもの
- パーキンソン病などの影響で身体が思うように動かず、イライラしてしまう
- 聴覚障害により、職員の声が聞こえず誤解して攻撃的になる
- 薬の副作用や体調不良で気分が不安定になり、暴力的になる
不安やストレスが原因で手が出る場合
精神的に不安定なときは、誰しも周囲に当たってしまうことがあります。
- 環境の変化に適応できず、不安が強まっている
- 家族や知人との関係が希薄になり、孤独感を抱えている
- 施設のルールに対するストレス
- 他の利用者との関係がうまくいかず、ストレスを職員にぶつける

どんな理由があっても、暴力を受けた側の気持ちは大切です。
自分の気持ちを否定せず、「つらかったな」「怖かったな」と感じることも大切です。
ひとりで抱え込まずに、安心して話せる相手に気持ちを吐き出してみてくださいね。
利用者からの暴力に対しての対応
利用者だからといって、職員が暴力を受け入れたり、我慢したりする必要はありません。
大切なのは、暴力が起こる原因を見極め、根本的な問題を解決することです。
そのためには、まず利用者の状況を冷静に分析し、適切な対応を考えていくことが重要です。
事例から見る対応例
事例1:薬の介助をしようとすると、大声を出される・殴られる
これ以外にもさまざまな要因が考えられます。
これらを一つずつ検証し、原因を探っていきましょう。
認知症の進行や、薬の味が原因である場合は、介護職員だけでの解決が難しいこともあります。
その場合は、ケアマネジャー・看護師・ご家族・主治医と連携しながら、適切な対応を見つけることが大切です。
例2:着替えの介助の最中に急に蹴られたり噛みつかれる
利用者が状況を理解できないまま介助を進めると、拒否反応が強くなることがあります。
また、洋服を脱ぐことへの恥ずかしさ、寒さ、環境の変化なども影響するため、利用者の気持ちに寄り添いながら対応を考えることが大切です。
自分自身のストレスにも目を向ける

暴力の原因や対応を考えることも大切ですが、それ以上に 自分の心と体を守ることも忘れないでください。
暴力を受ける側のストレスは計り知れず、「怖い」「辛い」と感じるのは当然のことです。我慢し続けると、心も体も限界を迎えてしまいます。
私自身も、利用者からの暴力に悩んでいた時期がありました。
薬の介助をしようとすると大声を出され、時にはお茶をかけられることも・・・
ベッドから起きるのを拒否され、どうしても介助が必要な場面で手を出されることが続きました。
毎日、爪を立てて掴まれるため、怪我が絶えない状況でした。
最初は「この人を支えたい」という気持ちがありましたが、暴力が続くうちに 「また殴られるかも」「怖くて近づけない」 と思うようになり、仕事が辛くなっていきました。
それでも、同僚も同じような目にあっていたため、「私だけが文句を言うわけにはいかない」と無理をしてしまいました。
しかし、限界を感じた私は、思い切って上司や他職種と相談することにしました。
何度も話し合いを重ねた結果、 「このままでは職員の安全が確保できない」「まずは体の状態を整え、認知機能についても専門医に診てもらおう」 という結論になり、最終的に退所となりました。
この対応が正しかったかはわかりません。
他にもっと良い方法があったのかもしれません。
ただ、怪我をする職員が減り、私自身のストレスも大幅に軽減されました。
「このまま耐えるしかない」と思い込まず、 一人で抱え込まずに相談することが大切だと実感しました。
まとめ
介護の現場で利用者からの暴力を受けたとき、「自分が我慢すればいい」と思ってしまうことがあります。
しかし、それは違います。
職員だって人間です。
痛いし、怖いし、辛いものは辛い。
個人の努力だけではどうにもならないこともあります。だからこそ、事業所全体で考え、対策を講じることが大切です。
しかし、介護施設によっては、
- 「避けなかった自分が悪い」
- 「認知症なのだから、多少の暴力は職員が我慢するべき」
といった考えが根付いているところもあります。
ですが、一人で抱え込む必要はありません。
暴力を受けたときは、遠慮せずに周囲に相談しましょう。
また、怪我の状況によっては労災認定されるケースもあるようです。
ただし、証明が難しいため、自分の身を守るためにも記録をしっかり取っておくことが大切です。
「もう無理…」と思ったら、無理しなくていい。
ストレスを抱え込みすぎないよう、適度に発散する時間を作りましょう。
好きなことをしたり、信頼できる人に話したり、自分なりの方法で気持ちをリセットすることが大切です。
あなたは十分頑張っています。
一人で抱え込まず、自分のことも大切にしてくださいね。
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